新堂教授の素朴な疑問:長周期地震動と免震構造

災害もまた時代とともに進化する、か...大地くんの言うとおりだね。ひとつ例を出そう。シンガポールはほとんど地震が起きない都市国家だ。ところが世界でも有数の地震国インドネシアが、すぐお隣にある。震源の浅い巨大地震が起きた時に、シンガポールの地上を歩いている人は全くいつもどおりなのに、高層ビルで働く人たちだけが驚いて、階下の出口に殺到した。

長周期地震動だ。

そう。今や国民の75%が高層ビルに暮らすシンガポールは、その建築を始めた1980年代から突如として地震国になったのだよ。

なるほど。

ところで、免震構造は知っているかい?

はい、地下室に行って、見せてもらったことがあります。地面と建物の間にゴムの柱を入れることで免震装置にしています。

うんうん。その免震構造は、長周期地震動に対しても威力を発揮するだろうか?

え?

免震構造は、地震による揺れを減衰させているんだ。短い周期の揺れが吸収されることで、結果的に固有周期は長くなるだろう。

そうか。長周期地震動に対しては免震の効果は小さくなってしまう可能性があるのですね。

そのとおりなんだ。だから、とにかく家具を固定することが何よりも大事なんだよ。

まだ日本が経験したことのない災害を明らかにした地震学・地震工学と、その対策を開発してきた耐震工学。次の巨大地震による被害を食い止めることはできるだろうか。地震を相手に戦うことに勝ちはなく、引き分けか負けかしかない学問だ。クリスマスでにぎわう夜景がいつまでも美しく灯る街であることを、僕は強く願った。

<次へつづく>