被災地からの問い合わせ

朝来てみると,レイ先生が電話対応していた.このたびの噴火のことだ.でも相手は報道関係者じゃないみたいだ.

噴火の見通しをつけるのは一般的に難しいこと,今回さらに難しいのは参考になる過去の噴火が300年前の一回だけであること,水蒸気爆発からマグマ噴火へと現象が変化したこと,それが意味するのは本格的な噴火になったんだということ,一連の活動は観測機器でモニターしていること,ハザードマップを見直すなどして注意してほしいこと,自治体からの情報に耳を傾けて欲しいこと.

電話を切ってから,しみじみとレイ先生は言った.

「野菜の生産者と共に販売や運営をされている方でした.ここまでしか分からなくて申し訳なくて,辛かったわ.私からのご説明をすべて聞かれて,電話の最後になんておっしゃったと思う?

『見通しが難しいこともわかりましたし,一連の噴火で何が起きているのかも,初めて全体像が見えました.事態は変わっていないが,全体像が見えたことで少し気持ちが軽くなりました.』って.」 生産者の切実さが僕にも伝わってくる.それだけに,辛い.(あのレイ先生が泣きそうである!)

「住民が求めていることのひとつは,こういうことなの.説明を,何が起きているのかの説明を.分からないことが起きているのなら,そいういう説明を.今日は何も説明することがありません,ということならそういう説明を.どうしてもっと定期的な説明が国からなされないのかしら..われわれ研究機関でできることは,観測も,解析も,分析も,情報発信も,もう力を尽くして,体を削ってやっていて,それらはすべて国に報告されているのに...我々にはできない,例えば定時の説明会なんかも,国なら開くことができるのに.」

スペースシャトルが帰還に失敗した時の広報を知っているだろうか.毎日定時に会見を開く.Nothing newなら「今日は新しい情報はありません」と伝える.あまりに情報発信が少ないと,知っているのに何か隠しているんじゃなかろうか,と人は思うからだ.

僕が間違えているのだろうか.国は,然るべき行政機関は,危機感が足りないのではなかろうか.住民の抱く不安に共感できれば,欲しいのはまずは情報だと,わからないだろうか.

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