物質境界と力学境界のように、地球内部を調べるにはいろいろな切り口がある。地震波の解析、鉱物の高圧実験、コンピュータシミュレーション、それから外核の対流が地球の磁場を生んでいるので電磁気学的な解析も必要だ。
未知の領域がすぐ足元にあったなんて驚きです。僕たちが直接目にすることができないものは、地震波や電磁波で見るわけですね。
その通りだ。ところでどうして対流が起きるか知っているかい? そもそも対流の原動力は何だろう?
味噌汁と同じだと考えると、熱でしょうか。けど熱源はなんだろう? 地球の中心に熱? いつからあるんだろう?
原始地球の頃からだよ。ちりや隕石が集まって地球が形成された時に、それらが互いに衝突して熱が発生した。他にも放射性元素の崩壊による発熱などもあるがね。地球の中心部では6000℃に達していると言われている。
対流はその熱を外に運ぶ運動なのですか?
そうだ。私たちの暮らす地表から地球内部の熱を逃がすために、核での対流とマントルでの対流が起きている。熱伝導で熱を逃がすのを待っていたらとても効率が悪いので、外核やマントルで対流がおきる。
外核の対流で熱が逃げて冷えるから、固体の内核が形成されるのでしょうか。
そう考えられているよ。その熱を受け取ったマントルも対流をして、よく冷えている地表へと向かう。地表で冷やされた部分は固い岩盤のプレートとなり、年間数cmの速さでゆっくりと旅をして、海溝から再びマントルの中へ沈み込んで行く。その過程で、火山活動を起こしたり、地震を起こしたりする。どうだい、地球はダイナミックな星だろう。暑がりだけどな。
地震は、地球のこんな大きな活動の一部だったなんて。僕の住む世界の足元ではなんてすごいことが起きているんだ。輝く宝石箱のマントル、その下にはサラサラの鉄の液体である外核があり、地球の中心には固体の鉄の球がある。外核もマントルもそれぞれ大きく対流をしていて、地球は自分自身を冷やそうとしている。地震は確かに嫌だけど、でも対流をしなくなって、地震や火山もない、冷えて固まった地球はなんだか想像したくないな。それにしても、一体地球はどれだけの驚きを僕らに見せてくれるんだろう。僕はまたあらためて、地球科学のとりこになった。
<No.7へ続く>