この図で、海での普段の波との違いもわかるわね。押しては引く海の波の波長、つまり波頭から波頭までの距離はどのくらい?
長くても数メートルですね。でも津波の場合は、この図から考えたら数キロぐらいでしょうか。
長いときには数百キロメートルにもなるのよ。2010年2月の南米チリ中部地震を覚えてる? 震源近くの村々を襲った津波を、現地の方が「コブラが海を背負って襲ってきたようだった」と表現していたのが印象的だったわ。頭を持ち上げたまま、その背後には大量の水を尻尾の先までずっと背負って襲ってきた、ということでしょうね。
押したり引いたりする海の波とは根本的に違うんだな。押したらしばらくは押し続ける。
浜辺にいる人がどうして津波に気付かなかったのか、これでわかったかしら?
海面と同じ高さにいると、津波の先端と普通の波頭との区別はつかないんですね。津波の場合は大量の水の塊が何キロメートルにもわたって続いているというのに。これが沿岸地表に達すると大量の水の流れとなって押し寄せ続ける。
押し寄せ続ける威力というのは絶大で、そうね、大地くんでもきっと50cmの津波に耐えられないわよ。
えっ! そんなに強いのですか? 膝くらいの高さで大人が立っていられないほど?!
押しては引く海の波を思い浮かべてはダメよ。激流の川の中、ポツンと立っているところを想像してごらんなさい。
大地くんは再び震えた。