フィールドに出てみない? 火山観測に行きましょう!
はい! ぜひ!
初めての野外調査だ。先輩達もみんな言っていた。「地球科学の醍醐味は、地球がまるごと実験室ということだ」って。なんだか生き生きしているレイ先生。そわそわと活気づく研究室の先輩達。僕も仲間入りだ。
最寄り駅へは新幹線で向かう。思ったよりも気楽に近づけるんだな。夏も涼しいこの辺りの高原は有名な避暑地だし、何より火山といえば温泉だ。ところが、一歩一歩山頂に近づくにつれて僕はショックを隠せなくなる。この山が噴火を始めたらどうなるのだろう? ふもとに住む人々も、火山なんて遠い存在と思っている街の人々も。
もう少しハードな観測の方が良かったかしら。先ほどから無口ね。
中腹はきれいな緑色だったのに、火口に近づくにつれてどんどん緑が減っていきます。もうこの先は石コロだけですね。
小規模なものも含めれば、この山は断続的な噴火を続けています。噴石が飛んできたり高濃度の火山ガスが排出されたりして、植物は育ちません。スケールの大きさに驚いているのでしょう。最近は机にしがみついてばかりだったものね。
はい。教科書に書かれている火山の断面図が、この雄大な景色のどこを指しているのだろう?と正直、面食らっています。それにずいぶん小さく感じます、人間が。
それを感じてもらえただけで今回は十分よ。でもいつか三宅島に行きましょう。2000年の噴火から今年でちょうど10年です。一部の植生は高濃度ガスで枯れたままですし、帰島できない被災者もまだいらっしゃいます。あなたが勉強してきた災害社会学が重要な働きをしてくれると思うわ。
はい! それにしても、地震の研究室で火山の観測に行くとは思っていませんでした。
地震と火山の関係について、宿に帰ったら調べてご覧なさい。