新堂教授の素朴な質問

津波についてのレポートを新堂教授に見てもらった。津波の押し引きについて,大陸プレート側では引き波から始まること、海洋プレート側では押し波から始まることも書き添えた。

津波の波長についてや、やが引き波と押し波のどちらから来るかなどがまとまっているの理解できたがいいねようだねで良かった。ところで、君は災害絵図の古文書もすらすら読めただろう。地震の揺れについてはなんと書いてあったかい?

「合計十三回の地震ありし。いずれも微弱震に過ぎさりし。」とありました。あれほどの大津波なのに「微弱震」とあったことが意外でした。

そう、それが今回の質問だ。調べたかな?

はい。「津波地震」と呼ばれる地震があることがわかりました。地震が発生するとさまざまな周期の波が出ます.。津波地震では僕たちが感じるような短い周期の揺れが少ないため、体で感じる揺れである震度は小さくても、大きな津波を発生させます。

なぜ短周期の波が少なくなるのかな?

断層での破壊がゆっくり進むためです。『地震と地震動、マグニチュードと震度』の時に勉強した、「ゆっくり地震」の部類ですね。通常の大きな地震では断層の破壊時間は長くても1、,2分ですが、津波地震では5~10分ほどと本に書いてありました。それから、地殻変動の量も大きくなるため、津波がより大きくなる、とも。

よく調べているね。津波についてはまだまだ知っていなきゃいけないことがたくさんある。引き続き調べてまたレポートを持ってきてくれたまえ。


津波が発生するメカニズムは、地震が断層運動だということから考察できた。考察の中で、津波の波長が普段ふだんの海の波とは異なることや、引き波から来る場所と押し波から来る場所があることも理解できた。一度押し寄せたら押し寄せ続ける津波、その破壊力は僕の想像以上だ。それを記した災害絵図や古文書。昔の人はどんな想いでこれを描いたのだろう? 災害科学を学べば学ぶほど募る僕の想いときっと同じはずだ。後世の人間がもう二度とこんな目に遭わないように、と。

<つづく>