このコンテンツは,2012年1月から3月に朝日小学生新聞に連載されたものです.著作権について,文章は大木聖子助教に,Pくん,Sくんはコモン株式会社の溝口真幸に,イラストはイノリカに属します.写真についてはキャプションに著作権を示しました.

第1回

地震の国で暮らす

今月からは地震のはなしが始まるよ.去年の3月には大きな地震があって,日本じゅうが悲しみました.今もたくさんの人が苦しい生活をしています.どうすればこんな悲しみや苦しみを減らすことができるでしょうか.これから3ヶ月間,一緒に考えていきましょう.

みんなと一緒に勉強していく友達を紹介します.PくんとSくんです.どんな子たちかって? それはこれからのお楽しみ.さあ,始めましょう.

:こんにちは.僕の名前は「ピー」です.

:「エス」っていいます.よろしく.

:とつぜんですが質問です.これはなんでしょう?

Ⓒ東京カートグラフィック/東京大学地震研究所

:青と緑のところがあって,赤い○がいっぱい.なんだろう?

:青は海,緑は陸をあらわしているよ.つまり,世界地図だね.

:世界地図?日本の地図なら見たことあるけど,僕の知っている日本列島が見当たらないよ.

:それは赤い○に塗りつぶされてしまっているから.

:えぇ?ちょっと待って,日本ってこんなに小さいの?

:そうだよ.僕たちの国はね,地球全体の1パーセント.この地図をケーキに例えると,100個にわけたうちのたった1個分なんだ.

:へえ!世界はずいぶん大きいんだなあ!ところで,なんで日本を赤の○で塗りつぶしちゃったの?

:そこがこの地図の特別なところさ.この赤い○はね,世界じゅうで起きた地震の場所なんだよ.

:赤い○がない国がいっぱいあるのはなんで?日本に暮らす僕たちは,大きい地震から小さい地震まで,たくさん経験しているのに.

:○のない国では地震が起きてないんだよ.

:えぇー!日本より大きい国はいっぱいあるのに,地震はほとんど起きてないの?.不平等だよ.

:さっきケーキを100個にわけたうちのひとつだけが日本の取り分,って言ったでしょ.でも地震は100個のうちの10個が日本で起きているんだ.

:ひえぇぇ.僕もう帰る.地震こわい.考えたくない.

:考えても考えなくても,地震は起きちゃうんだ.だったら一緒に考えようよ.日本人はずっと,地震の国を生き延びてきたんだから,対策があるんだよ.

:そうか,それで僕が対策を家族に教えてあげよう.

:そうさ.さあ,始めよう,地震のはなし.きみの命ときみが大切に思う人たちの命をまもるために.

 

 

地震研だより

世界震源地図をよく見てみよう.アメリカにはどのくらいの地震が起きているかな?アフリカやヨーロッパはどうだろう?

赤い○は海の中にもあるね.海の底でも地震は起きているんだよ.

この地図には,大きい地震順に,中くらいの大きさの地震までを描いたんだ.○の数は三万個以上もあるんだよ.

ではちょっと難しい質問です.日本の近くにはいくつの○があるでしょう?ヒントは,100個のうちの10個分が日本で起きる,ってこと.わかったかな?

世界震源地図の大きいものは販売しているので,さらに詳しく見たい人はこのホームページから売り場を探してみてね.売り上げの一部は被災地に寄付されるよ.

http://raytheory.jp/education/material/