断層面でのすべり分布とアスペリティ

新たな疑問が出てきたなあ。広がりを持った面である断層がずれ動くときは、「せーの!」でいっせいに動くのでしょうか。地震を起こした断層面で、ぱっくりきれいに長方形に沈んだり盛り上がったりするなんて、現実的とは思えません。断層の端っこでは滑らかに地面とつながっているはずです。

今日はするどい質問が次々と出てくるわね。おっしゃるとおり、せーの!でいっせいに動くわけではありません、ある点から破壊が始まって、それが伝播し、やがて止まります。

断層面のある点で破壊が始まり、伝播し、止まる。地震発生の瞬間を引き延ばして観察すると、このように見えるのですね。

そう。それから、断層面のどこもかしこも均質にずれるわけでもないのよ。

均質に?

図1では断層面のどの点も、同じ量だけ、同じ方向に動いているでしょう? 実際にはそういうことは起こりません。2008年5月に中国で起きた四川地震を例にとりましょう。マグニチュード8.0というのは、内陸部で起きる地震では最大規模です。断層の端から始まった破壊は、北東方向へと伝播し、最終的には250kmにわたる断層のほぼ全域を破壊しました。

250km! 東京から名古屋までの距離だ。

「東京から名古屋までの全域が震源域の直上になった」ということなの。

そんなに大きな地震だったのか。マグニチュード8のエネルギーたるや。

それだけの広さの断層面が一体どのくらいずれ動いたのかというと、平均的には数メートルと言われています。でも全体が均質に動いたのではなく、伝播していく中で、ある部分は1m、ある部分は10mというように、特にたくさんずれるところとそうではないところがあるのです。

10mも動いたところがあるのですか?

最大すべり量はね、断層面が動いた長さを「すべり量」と言いますが。あまりに長大な断層だったので、2つのセグメントに分かれて活動したという結果も出ています。地下の断層面のどこが、どのくらいずれ動いたかは、観測された地震波を解析することで調べられるのよ。こうして得られる図を「すべり分布」といいます(図2)。

まるで等高線みたいだ。目玉になっているところが大きなすべりを起こしたところか。

そう。この目玉を「アスペリティ」と呼んでいます。